◆宝石を見分けるにはたくさんの宝石を見比べること
■宝石を見分けるには数多くの宝石を見比べる以外に方法がありません。最高級のルビーを見る。最高品質といわれるその色を覚える。その価格を知る。逆に粗悪で安価なルビーを見る…その繰り返しです。その体験の累積が宝石を見分ける眼力になっていくのです。
■たくさん見るといっても、散漫にみないで1〜2種の宝石にしぼって集中的に見ていくのが効果的なやり方です。
昔私が宝石業界に入りたての頃の話です。宝石のイロハも解からず、かといって一々先輩に聞くわけにもいかず、思い余った末宝石店をハシゴして回ったことがありました。サファイアについて数店聞いて回ると、大体共通した答えが跳ね返ってきます。次はエメラルドという風にこれを繰り返して、短期間に色石の見分け方のアウトラインをつかむことができました。
◆主要宝石の見分け方
■ダイヤモンド
●ダイヤは宝石の中で唯一品質の評価基準が確立している宝石です。米国G・I・A方式の4Cの基準によって明確にそれぞれの評価が決められます。
<カラット> 宝石の重さを表す単位で、1カラットは0.2グラムのこと。大きなダイヤほど高価になるのはもちろんですが、さらに大きなダイヤ原石の産出は少なくなるので、同品質のダイヤでも1カラットは0.5カラットの2倍以上、2カラットは1カラットの2倍以上と等比級数的に高くなります。
<カラー> ダイヤは基本的には無色透明石ですが、等級が下がるにしたがって黄色みを帯びていきます。等級は完全無色のDカラーを最上とし、Zカラーを最下級とする23のランクが設けられています。

□  D E F G H I J K L M N O … Z
<クラリティ> ダイヤの結晶が生成する過程で取り込まれた何らかの鉱物の結晶や、ダイヤ特有のクラックの程度ですが、完全に無傷のFLから肉眼で容易に見えるIクラスまで11段階があります。

□  FL IF VVS VVS VS VS SI SI I I I
<カット> ダイヤの輝きを最大限引き出すべく考案されたブリリアントカットで、理想のプロポーションから外れる度合いで4段階が決められています。

□  EX VG G Fa
●ダイヤの4Cは鑑定機関によって評価が下され、それにしたがって、例えば0.5カラット台のFカラーでVSでGのダイヤはガイ(1カラット当りの値段)が幾らという風に商取引が行われていきます。

●4Cの評価を下すのはあくまでも民間の鑑定機関です。したがって鑑定書の発行元が有名で権威のある鑑定機関かチェックする必要があります。以前に某ナショナルチェーン店が子会社の鑑定機関に鑑定書を作成させていたケースがありました。身内の鑑定機関では当然その評価が甘くなることが予想されます。

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■ルビー
●ルビーは産地によってその色調が異なります。

【ビルマ(ミャンマー)産】
ルビーの赤色は酸化クロムの含有によるものです。ビルマ産のルビーが美しい赤色を示すのは、この着色成分が多くその純度が高いためです。俗にピジョン・ブラッド(鳩血)色を最高のルビーの色といいますが、そのほとんどがビルマ産の良品といえます。しかしビルマ産ルビーは現在ほとんど産出がなく、色調は良くてもインクルージョンが多くテリのない石が多いように思えます。

【スリランカ産】
チェリーピンクと言われる、淡色で色調の明るい傾向を示します。

【タイ産】
現在市場に出回っているルビーのほとんどがタイ産です。タイ産のものは鉄分の含有が多く、やや黒みがちの暗赤色を示します。

●同じコランダムのサファイアが大きな石を産出するのに比べて、ルビーはほとんど大きな石が取れません。良質の3カラット以上の大きなルビーは非常に高価なものになります。
■サファイア
●サファイアの色の良し悪しはインクの色に例えると解かりやすいと思います。

【ロイヤルブルー色】
明るく柔らかみがあり、適度に透明感のある青色。インクでいえば「ロイヤルブルー色」が良質のサファイアの色です。産地でいえばビルマ産のサファイアの特徴と言えますが、残念ながら現在ビルマからはほとんどサファイアの産出がありません。

【ブルーブラック色】
インクの「ブルーブラック色」は一見濃いブルー色に見えますが、実は黒みを帯びた暗青色なのです。このように冷たく暗い「ブルーブラック色」は評価が低くなります。産地でいえばタイ産のサファイアの特徴です。

【スリランカ産】
現在サファイアの主要な産地はスリランカです。スリランカ産のサファイアは色がやや薄いきらいがあるのですが、色調が明るく透明感があって評価は高くなります。

●よく矢車草色のカシミール産のサファイアが最高の色と言われていますが、現在この鉱床からはほとんど産出のない幻のサファイアです。
■エメラルド
●現在世界のエメラルドの80%以上が南米のコロンビアで産出されています。また質的にも最高と評価されるエメラルドのほとんどがコロンビア産です。エメラルドの品質は「色合い」と「透明感」の2つの尺度で見ていくといいでしょう。

【色合い】
深く鮮やかな緑色を最高の色とし、色が薄くなるにつれて評価が下がっていきます。

【透明感】
エメラルドはインクルージョンの多い石だと言われていますが、これは結晶時にクロムが入り込んだためで、これがキズの原因となり、ひいてはエメラルドが欠けやすい理由にもなっています。しかしエメラルドのグリーンはそのクロムによるものであることを考えると、まさにエメラルドの美しさはその脆さと引き換えに天から与えられた代償と言えましょう。
インクルージョンがつきもののエメラルドですが、それでもなおインクルージョンが少なく透明感に溢れたものを最高のものとし、逆に増えて濁っていくと評価は下がっていきます。

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■真珠
●真珠は養殖する貝の種類によりその色や大きさはまちまちですが、その評価を決めるのは次の通りです。

【巻き】
真珠核の周りに形成された真珠層ですが、これが厚いと重厚な色合いを帯び、薄いといかにも安っぽい印象しか与えません。

【テリ】
真珠の表面に光沢があるかどうか。

【色】
貝の種類によりその色調は大きく異なります。和玉ではピンク・ホワイトが尊重され、黄色系は安価になります。黒蝶真珠では見る角度により色調が様々に変化するピーコック(孔雀)カラーが尊ばれます。

【大きさ】
もちろんサイズが大きくなるほど高価になりますが。南洋真珠(白蝶貝)や黒蝶真珠(黒蝶貝)は貝が大きいので、20ミリ近くのものが養殖できるのに比べて、和玉(アコヤガイ)では10〜11ミリが限度です。

【形】
俗に八方ころがしといわれる「真円」のものを最良とし、「流れ玉」と呼ばれるいびつなものは評価が下がります。

【キズ】
キズといっても実際は真珠の表面の凸凹のことです。養殖真珠といえども微細な凸凹があるのは当然なことですが、それがあまりに目立つ場合は評価が下がります。
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